本ガイドラインは、日本に暮らす人々がより効果的かつ戦略的にBDS(ボイコット・投資引き揚げ・制裁)運動を行えるようにするために作成されたものです。随時更新をしていく予定です。

最終更新日:2024年4月20日(土)

BDS運動の目的

 2004 年7月9日、国際司法裁判所は、イスラエルがパレスチナ人を隔離する目的で建設していた分離壁(アパルトヘイト・ウォール)を国際法違反であると指摘し、国際社会に対して分離壁撤廃のために行動することを求めました。しかしイスラエルは、その後も分離壁建設を続け、それについて国際社会から制裁を受けることもありませんでした。BDS運動は、このようなイスラエルの国際法違反が放置される「不処罰の伝統」を終わらせるため、パレスチナ人によって開始されました。
 2005年7月9日、パレスチナ市民社会の170を超える団体が声明を出し、世界中の市民と政府に対し、アパルトヘイト期の南アフリカに対して国際社会が行ったように、イスラエルに対してもボイコット・投資引き揚げ・制裁を行うことを求めました。そして、イスラエルが以下の3項目を実行し、それによってパレスチナ人の民族自決権を承認する国際的義務を果たすまで、イスラエルに対するBDSを続けると宣言しました。

  1. アラブ人の土地に対する占領と植民地化を止め、分離壁を解体すること。
  2. イスラエル内のアラブ・パレスチナ人市民の基本的権利を認め、平等に扱うこと。
  3. 国連総会決議194号で定められたパレスチナ難民の故郷への帰還の権利を尊重し、保護し、促進すること。

 現在は、ヨルダン川西岸地区の中心都市ラーマッラーに置かれたパレスチナBDS民族評議会(BDS National Committee;以下BNC)が全世界で行われるBDS運動を取りまとめ、NGOや組合、市民団体の間を調整する役割を担っています。

日本におけるBDSのターゲット

 理想的には、イスラエルに制裁を行い、イスラエルのアパルトヘイト政策に加担する全ての企業の商品をボイコット(不買)し、投資を引き揚げて圧力を掛けていくことが必要です。しかし、全ての企業や団体に対して同時にアクションを行おうとすると、圧力が拡散して効果が薄れてしまう恐れがあります。また、より多くの人に運動に参加してもらうためには、アパルトヘイトやジェノサイド(集団殺害)への加担の度合いが高く、倫理的問題が分かりやすい対象を選ぶことが効果的です。
 そのため、私たちBDS Japan Bulletin は、BNCとの調整の下、日本でのBDS運動をより効果的かつ戦略的に行うため、以下をBDS運動ターゲットとして提案します。特に2024年2月23日の更新では、これまでB(ボイコット)とD(投資引き揚げ)について記載してきたのに加え、S(制裁)を追記しています。(注1)

BDSのS(制裁) 日本政府への要求

 日本政府はこれまで二国家解決の支持のもと、「最終的な解決を予断するような一方的な変更は,いずれの当事者によるものであっても,承認できない」とし、特にイスラエルによる入植活動は国際法違反であり直ちに凍結させる必要がある、東エルサレムの強制併合やパレスチナ人の家屋破壊も許されない、という立場をとってきました。またガザ地区の人道状況を憂慮し、封鎖の緩和を求めてきました。

また南アフリカによるイスラエルに対する国際司法裁判所(ICJ)への提訴を受け、ICJ暫定措置命令について、イスラエルにより誠実に履行されるべきと表明しています。

にもかかわらず、日本はこれまでイスラエルの度重なる国際法違反や右傾化によるパレスチナ人への暴力の激化に対し、立場表明以外の有効な手だてを行わず、「不処罰の伝統」を守り続けています。またロシアや中国に対して、「法の支配」を掲げて国際法を推進する立場を強調する一方で、ICJ暫定措置命令を一切無視しているイスラエルの凶行を止めることができていません。

市民から日本政府に対して、以下の通りイスラエルに制裁を行うように求めましょう。

①対イスラエル武器禁輸を求める国連総会決議(ES-9/1、1982年)およびイスラエル軍によるジェノサイドの可能性を前提としたICJの暫定措置命令等を受け、イスラエルに対する武器(デュアルユース製品・技術を含む)の輸出入を全面的に禁止するよう求める

 これによって日本の技術や製品が現在進行形のジェノサイドで利用されることを防ぐことができます。

BJBは山梨県に本社を置く、世界シェア第2位の産業用ロボット製造企業ファナックに対して、現在署名をおこなっています。これはファナックが自社のロボットなどを、イスラエルの最大手軍需企業やイスラエルに武器を供給する海外の軍需企業に販売しているからです!今まさにパレスチナ人の虐殺に加担している“死の商人”たちの工場で、日本企業のロボットが武器製造に使われているのです。

https://chng.it/sC6ybWVYjd
ぜひ、説明文をご覧いただき、署名と拡散にご協力ください。
詳細は2024年2月24日土曜日のChoose Life Project/D2021主催番組「【緊急生配信】D2021×CLP「日本でパレスチナのためにしたこと・できること ーイスラエルの兵器と日本の関係」もご覧ください。

②イスラエル軍によるジェノサイドの可能性を前提としたICJの措置命令を受け、ジェノサイドを促進するリスクのある協定・覚書の破棄を求める

 日本はイスラエルと様々な分野で協定・覚書等による関係を結んでいます。特に、近年はサイバーセキュリティ・防衛といった軍事・安全保障分野での協力協力や、いまある投資協定に基づく経済協力関係をより強固なものにしようとする経済連携協定(EPA)共同研究の立ち上げなど、今までにない速度でイスラエルとの関係強化を進めています。こうした日本を含む国際社会が、イスラエルと通常の関係を築き普通の国扱いしてきたことがイスラエルであれば何をしても許されるという不処罰の状態を容認し、今回のジェノサイドを引き起こしたことは言うまでもありません。さらに、こうしたイスラエルとの協力関係の構築は日本政府や日本企業が直接的にイスラエルの戦争犯罪に加担するリスクを伴うものです。

以下、まずは近年に結ばれた以下の軍事・安全保障分野での覚書・協定や、両国のビジネスを包括的に促進することで日本の民間企業や消費者までをも戦争犯罪に加担させる可能性の高い協定に的をしぼり、制裁を呼びかけます。

▲「イスラエル国防省との防衛装備と技術に関する秘密情報保護の覚書」の即刻破棄を、内閣・防衛省・外務省に求める。また衆参議院の安全保障委員会外交防衛委員会の委員となっている議員や地元から選出された議員に働きかける▲

▲「投資の自由化,促進及び保護に関する日本国とイスラエル国との間の協定(日・イスラエル投資協定)」の破棄と、「あり得べき日・イスラエル経済連携協定(EPA) に関する共同研究」の凍結を、内閣・経済産業省・外務省に求める。また衆参議院の外務委員会外交防衛委員会経済産業委員会参議院リンク)の委員となっている議員や地元から選出された議員に働きかける▲

▲「イスラエル・国家サイバー総局とサイバーセキュリティ分野における協力に関する覚書」の破棄を、内閣と内閣官房総務省・外務省に求める。また衆参議院の外務委員会外交防衛委員会、サイバーセキュリティ戦略本部の本部長(令和5年12月14日現在林芳正)、副本部長(令和5年12月14日現在河野太郎)や部員に働きかける▲

③国際法に違反して建設されている入植地産製品の禁輸措置を求める

 日本を含めた国際社会は現在、東エルサレムを含めた西岸地区とゴラン高原へのイスラエルの入植は国際法違反であるとし、正式な領土と認めていません。にもかかわらず、これらの土地で生産された製品・農産物は「イスラエル産」と表記され販売されています。

▲イスラエルの入植型植民地主義の最前線である入植地産の製品の禁輸を、内閣・経済産業省・外務省に求める。また衆参議院の経済産業委員会参議院リンク)の委員となっている議員や地元から選出された議員に働きかける▲

また、わたしたち消費者がイスラエルと認められていない土地の製品を▲「イスラエル産」として購入・消費させられている、という産地偽造の問題について、内閣府消費者庁に通報・抗議しましょう。

①②③に加え、日本政府には引き続き国連パレスチナ難民救済事業機関UNRWAへの拠出金停止に抗議し、即刻再開を求めることも重要です。UNRWAの拠出金停止の問題点については、「UNRWAへの拠出金停止の意味——ジェノサイドの加速化とパレスチナ難民帰還権の抹消」にも記載されています。

BDSのB(ボイコット)とD(投資引き揚げ)
消費者・企業への呼びかけ

①マクドナルド

 マクドナルドは元々はBNCの呼びかけで始まったわけではなく、草の根のボイコット運動として開始しました。しかし、ガザで230万人のパレスチナ人が虐殺されるなか、イスラエルの占領軍を無料の食事提供で支援してきたことからボイコット運動がより切実に呼びかけられるようになると、サウジアラビアのLionhorn Pte Ltdが所有するマレーシアのマクドナルドのフランチャイジーは、パレスチナ人への正義と平等を提唱する連帯グループBDSマレーシアに対し、「名誉毀損」を訴え、100万ドル以上の損害賠償を求めるスラップ訴訟を起こしました。詳しくは「マクドナルドをボイコット! マクドナルド・イスラエルはガザ虐殺を支援、マクドナルド・マレーシアはパレスチナ連帯の活動家らを迫害」をご参照ください。

 ガザ虐殺に加担するイスラエルのフランチャイジーや、パレスチナの解放闘争に対し平和的に連帯するマレーシアの市民に対してこのような訴訟を起こして言論を封殺するマレーシアのフランチャイジーに対して責任を取らないマクドナルドチェーンの姿勢は決して許されません。BNCは①イスラエルの戦争犯罪、人道に対する罪、ジェノサイドへの支援をしたイスラエルのフランチャイジーとの契約解除、②マレーシアのフランチャイジーによるBDSマレーシアへの訴訟取り下げと謝罪、またはマレーシアのフランチャイジーとの契約解除、これら①②が行われるまでマクドナルドの世界的なボイコットを訴えています。

▲マクドナルドで食事やテイクアウトをしない▲
▲マクドナルドに対する世界的なボイコットが行われていることを共有・拡散する▲
▲日本マクドナルドに対し、イスラエルのパレスチナ人に対する人権侵害や暴力に反対するスタンス表明を要求する▲

なお、ボイコットを行う理由は上述の通りイスラエルやマレーシアのマクドナルドによるパレスチナ人への人権侵害加担があるためです。店前などでアクションを行う際に、マクドナルドの従業員個人に対する人格攻撃やハラスメントは起こさないように注意してください。

②イスラエル産の農産物およびその加工品

 イスラエル産の農産物や加工品を消費することには、複数の大きな問題が絡んでいます。まず、スーパーに並ぶイスラエル産の農産物には、パレスチナ人の土地を国際法に違反して奪取した違法入植地の農地で栽培されたものが多く含まれています。しかし日本ではイスラエル産と入植地産の産地表示を区別する決まりが無いため、全てが「イスラエル産」として表示されています。しかし、特にデーツ、アボカド、ワイン、花きを中心に相当数の入植地産農産物が輸入されています。
 さらに、入植地産あるいはイスラエル領域内におけるイスラエル農業の繁栄の裏には、建国時にパレスチナ人農家の土地やそこで育まれた品種を奪ってきた歴史的経緯があります。イスラエルは農地として条件の良い肥沃な土地や水源を優先して占有しており、パレスチナ人の農業は苦境に置かれてきたほか、パレスチナ産農産物や加工品は、生産・輸出においてもイスラエル軍から妨害を受けています。軍や入植者によるパレスチナ人の畑を焼き払ったりオリーブの木を切り倒す行為も繰り返し報じられています。
 また入植型植民地主義の本質が先住民から土地を奪い取り、その土地から先住民を追放する行為であることを鑑みれば、土地と密接に関わる産業としての農業の発展は象徴的な意味合いがあります。イスラエルはイスラエル産農産物の普及とそのブランディングによって、土地との結びつきを正当なものだと主張する道具としています。

そこで私たちは以下のアクションを呼びかけます。
▲イスラエル産の農産物と加工品を買わない▲
▲イスラエル産の農産物と加工品を取り扱う大手スーパーに取引中止を要請する(メール・お問合せフォーム・電話・抗議活動など)▲
▲イスラエル産の農産物と加工品を取り扱う個人スーパーに人権侵害に加担しないよう、情報提供する▲
▲ビック酒販・エノテカ・リカーマウンテン・にイスラエルの入植地ワインを取り扱わないように抗議する▲

イスラエル農業の問題点についてより深く知りたい方はこちらの記事も参照ください。

https://note.com/embed/notes/nf3e60ec8c2f0

③HP(ヒューレット・パッカード)

 HPは、イスラエルがアパルトヘイト政策、占領政策、入植者植民地主義に基づきパレスチナ人を「管理」するシステムを維持するためのテクノロジーを提供・運営しています。またイスラエル軍と警察にサービス提供をして違法な占領とガザ包囲に加担している他、イスラエル域内のパレスチナ人に対するアパルトヘイト政策に加担する「アビブ・システム」、占領下のヨルダン川西岸地区の違法入植地に住むイスラエル市民の情報をまとめた「イエシャ・データベース」にも技術提供をしています。
 人権侵害のテクノロジーを提供するグローバル企業に対する危機感から、以下のアクションを呼び掛けます。(注2)(注3)

▲パソコン、モニター、プリンターを含むHPの製品を買わない▲
▲自分の職場や学校がHP製品を導入している場合、IT機器のリースや購入の担当者に対しHPについて情報提供をする▲
▲家電量販店に対してHPの取り扱い中止を呼びかける▲

④ソーダ・ストリーム

 ソーダ・ストリームは2015年にBDS運動の圧力を受け、西岸地区の違法入植地における工場は閉鎖しました。一方で新工場が建設されたネゲヴ砂漠も、イスラエル政府による先住のベドウィンの強制立ち退き政策が進む地域のため引き続きボイコット対象になっています。

▲ソーダストリームの製品を買わない▲
▲家電量販店に対してソーダストリームの取り扱い中止を呼びかける▲


 イスラエルの戦争犯罪やアパルトヘイト政策に加担するより多くの企業・団体を知りたい方は、https://www.whoprofits.org からも情報収集が可能です。また、BDS運動の最新の動向は、https://bdsmovement.net もご覧ください。

(注1)本ガイドラインは、ここに記載されていない企業や商品に対するアクションを止めるように呼びかけるものではありません。全ての人がより良い方法を模索し、自分に合った形でBDSに参加することが出来ます。一方で根拠のないボイコットの呼びかけはBDS運動の信頼を損ねるものになりかねず、ボイコットの対象を選択する際には、対象とする企業・団体・商品がアパルトヘイト政策に加担していることを明確に説明できるようにしておく必要があります。
(注2)HPブランド企業には分割されたHPEとHPIや各国の法人がありますが、現在BDSはHPブランド企業全体を対象にしています。
(注3)BDSは既に購入した製品を全て廃棄するように求めるものではありません。パソコンなどは高価なものですので、既にHP製品を使用してしまっている場合に無理な買い替えを行う必要は無いと考えます。

“日本におけるBDSガイドライン”. への5件のフィードバック

  1. 質問なのですが、
    急遽パソコンを買わなければならなくなって、焦っているのですが、DELLはこのサイトでは、対象になっていないのですが、SNSの誰かのリストではDBSの対象になっていました。
    自分にとってはおそらく一番使いやすく、値段も手頃なので、できれば買いたいのですが、対象になっているかを教えて頂けませんでしょうか。

    いいね

    1. コメントありがとうございます。DELLは我々の知る限りは対象にはなっていないと思われます。

      いいね

  2. キャンペーンサイトをありがとうございます!文字だらけでシェアしにくいのですが(読んでもらえない)海外のキャンペーンのようにボイコット対象のブランドのロゴをトップに持ってきて、ビジュアルメッセージを前に出していただけるととてもありがたいです。

    いいね

    1. コメントありがとうございます。中の人間の手が回っていないのですがぜひ作成したいとは思っています。少々お待ちください。

      いいね

      1. ありがとうございました。
        ツイッターでリストに入れていたかたは、リストに入れた理由を簡単でいいから書いてくれるといいなと思いますね。

        いいね

コメントを残す

現在の人気

WordPress.com で次のようなサイトをデザイン
始めてみよう